2021年この夏猛威をふるった新型コロナウイルスの第5波も、新規感染者数が落ち着いてきていました。しかし2022年に入っても完全終息のめどがつかず、5月には4回目の予防接種というニュースも飛び込んできました。不要な接触を避けるために、これまでご自宅の外壁塗装リフォームを見送られていた方も、「感染が落ち着いている今のうちに家の塗り替えをしようかな…」と、業者探しをされているところではないでしょうか。
ですが、実は住宅リフォーム業の倒産はコロナの収束に反し増加しており、それどころか今後更に増える可能性すら指摘されています。もしも塗り替えをお願いした塗装業者がまさにその「破綻予備軍」だったら……! 塗り替え後も長くお付き合いできるような安心・信頼できる業者に出会うにはどうしたら良いのでしょうか。今回は、住宅リフォーム業の倒産が増加している理由と背景、そして信頼できる業者選びのポイントについて説明します。
目次
建設・住宅リフォーム業のコロナ関連倒産は前年を上回るペースで加速
帝国データバンクの調査では、新型コロナウイルスによる関連倒産は2021年11月26日の時点で全国に2427件となっています。
参照:帝国データバンク「新型コロナウイルス関連倒産」※2021年11月26日更新時 https://www.tdb.co.jp/tosan/covid19/index.html
リフォーム市場に関して言えば、2020年4月に初の新型コロナ感染症による緊急事態宣言が発令され、施工業者は営業活動を自粛、一方の消費者側も水回りの入れ替えや外壁塗装を不急と判断するケースが多く、市場は一気に冷え込みました。その後状況は回復傾向に転じ、建設業や住宅リフォーム業はコロナ禍でも生き残っていけるとの希望的観測も見られました。
ところが、コロナ関連倒産は2020年の年末頃から前年よりもさらに早いペースで急増し、中でも建設業はあれだけ危機を報じられていたホテル・旅館業を大きく超え、今や飲食業に次ぐ倒産件数第2位となっています。
参照:リフォーム産業新聞社「建設業の経営破綻が飲食業に次ぐ2番目に 店舗内装の工務店、コロナのあおり受ける」(有料記事)
https://www.reform-online.jp/news/reform-shop/20420.php
住宅リフォーム業の倒産が増えている背景
新型コロナは収束傾向にあるにもかかわらず、なぜ住宅リフォーム業の倒産は増加傾向にあるのでしょうか。
それには大きく2つの理由があります。
1. 住宅リフォーム業の多くは中小・零細企業
1つ目はこの業界を占める中小・零細企業の割合です。住宅リフォーム業は中小・零細企業が圧倒的な割合を占めています。そして、新型コロナウイルスによる関連倒産で最も多いのが、まさしくそのような体力のない小さな会社です。もともと経営体質の改善が急務であった業者が政府の支援によって事業継続していたものの、支援や融資が切れることで窮地に追い込まれ、再建できずに破産を選択していると考えられます。住宅リフォーム業の倒産増加は、コロナショックは単なるきっかけに過ぎません。それが次に挙げるもうひとつの理由「価格競争」です。
2. 加熱する価格競争
2つ目は近年益々加熱する価格競争です。例えば、ご自宅の屋根外壁を耐久性の高い無機塗料で塗り替えたいと考え、見積もりを2社に依頼し、A社は180万円、B社は150万円を提示したとします。見積料金だけを単純に比較すれば、同じ工事をするなら安い方が良いに決まっていますので「30万円安いからB社に依頼しよう」となるのは当然のことです。ところで、その30万円の差額の違いはどこからきているのでしょうか。その違いについて深掘りしてみましょう。
差額の裏側にある「質」と「量」
見積料金の差が生じる理由として、もちろん営業方法や企業規模も大きく関係してきますが、提供するサービスの質と量が業者に委ねられていることも一因として考えられます。
具体例を挙げるなら
- 社員教育(マナー、技術、知識や経験、丁寧な説明)
- ショールーム(来て見て触れる、施主の納得と満足)
- 必要十分な塗料缶数による施工
- 必要十分な塗り手間
- 現場管理(現場調査報告、定期訪問、指示や是正、完了報告など)
- 事業継続基盤(〇年点検、アフターフォロー、万一の対応、長い付き合い)
見ておわかりの通り、これらは施主が最も求める安心感や満足度に直結するものばかりです。そしてまた同時に、これらは価格競争に晒される小規模の塗装業者が手っ取り早く削りやすい部分でもあります。窮地に立つ塗装業者は工事受注するために価格を下げ、それでも僅かな利益を残そうとこれらの質と量を削らざるをえません。当然施主の安心感、満足度は低下し、結果的にクレームとなっても業者には対応できる余力はすでになく、トラブルとなる可能性が高くなります。そしてそのトラブル事例はインターネット上であっという間に地域に広まり、それでもなんとか受注するため業者はさらに値を下げ、最終的に資金はショートし破綻に追い込まれます。
格安のしわ寄せは施主に返ってくる
施主側からすれば、外壁塗装は安い買い物ではありませんのでもちろん価格は大事な選定基準です。しかし、企業は元手や対価がなければ相応なサービスを提供することが難しいのも事実です(金額に関わらず、手抜き工事などがある場合は無論論外ですが)。コロナ禍で窮地に立たされる塗装業者の背景には、多かれ少なかれこういった負のスパイラルを抱えています。そして万が一倒産となれば、保証の不履行やアフターサービスを受けられないなど、結果的に契約してしまった施主の不利益に直結してしまうのです。
「破綻の兆候」の見抜き方
そのようなトラブルを避け外壁塗装を成功させるために、施主ができることがあります。
健全な経営状態であるか
窮地に追い込まれている業者は、受注を獲得して仕事とお金を回すため、元気がなくてもカラ元気を装います。そこを見極めることができないと大変なことになってしまいます。とはいえ業者に「決算書を見せて」などと直接経営体質を伺うことはさすがに気が引けるかと思います。ご自身で健全な業者をある程度見分ける方法については以下の記事で詳しく解説しています。
破綻予備軍が出す要注意サインを見逃さない
資金繰りに困り自転車操業に陥った業者は、すぐにでも契約や入金が欲しいため、次のような行動をとります。
- 値引きを条件に契約を急がせる
- 着工前入金を持ちかける
- 不自然に完工を急ぐ
そのほかにも、「担当者が突然いなくなる」「ストップしている工事がある」「使う塗料を変えたいと言ってくる」などのケースは、仕入れ先や職人さん、従業員とトラブルになっている可能性があり、そのトラブルは支払いの遅れ等の資金繰りに起因していることがあります。
価格だけの判断による安易な契約は危険
最もしてはならないことは、その会社の情報をよく集めないまま、大幅な値引きに惹かれて即日契約や着工前入金をしてしまうことです。「安ければ適正価格」といった判断は少し性急です。
前述の通り、安い価格や大幅な値引きにはそれなりの理由があるのです。
おわりに
住宅リフォーム業の倒産が増加している理由と背景について説明しました。新設着工件は数年々減少しており、前述の価格競争、消費税の増税、そこにコロナショックが加わり、そこから支援策の打ち切り……。建設業、住宅リフォーム業に限定しても、破綻予備軍が持ち直す明るい話題はしばらくは見当たりません。コロナショックを機に、ここ数年で体力の乏しかった業者の多くは淘汰されていくと予想されます。
それまでの間、業界から消えゆく業者のペースにのせられ契約をしてしまわないよう、経営体質はもちろん、塗装業者が提供するサービス内容や質の違いをよく確かめた上で提示金額と照らし合わせ、理解納得するまで十分な時間を割くことが大切です。